King's Gambit Wind Orchestra

進化と挑戦を続ける吹奏楽団

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交響曲第8番「マヨルカ島の山々」 / D. ブージョア ①演奏に寄せて

      2018/05/04

文:向井友亮(当団マネージャー、テナーサックス奏者)

本日より3回にわたって連載コラムをお送りするのは、第6回定期演奏会のメイン【交響曲第8番「マヨルカ島の山々」/D.ブージョア】について。

この曲、通称「マヨルカ」がどれほど大変な曲なのか、本日はその表面的な事実と演奏にあたっての意気込みのようなものを語らせていただくことにしよう。

明日は曲紹介Part1、明後日は曲紹介Part2をお送りするので、そちらもお楽しみに。

 

さて、今回当団がこの曲を通じて皆様と共有する音楽体験とは以下のようなもの。

①日本初演となる全六楽章の演奏

②演奏時間80分(体調による増減あり)

③当団史上、最高難度(かもしれない)

といったところだが、本演奏会の(意味的にも、物理時間的にも)8割がこの曲のためにあると言ってもいいかもしれない。一つずつ解説していこう。

 

まず、日本初演について。

このホームページで公開されているフライヤーや当団が配布しているチラシをよく見ると、MALLORCAのそばに控えめな文字で(全楽章)と書いてある。普通こういった複数楽章になるものでは特別な追記がない限り、全曲であることが当たり前かもしれないが、あえて書かせていただいた、「私たちは挑戦する」という意思表示のために。

ご存知の方もいらっしゃるが、当団は大阪にて2012年に結成、その中核となったのは大阪府立茨木高校吹奏楽部のOB・OGと大阪大学吹奏楽団のメンバーである。この二つの楽団がかつて「マヨルカ」を演奏したことがあるが、そのときに演奏されたのはいずれも2、5、6の楽章を抜粋したものである。数少ない国内での演奏であるその両方ともで指揮をとった当団指揮者・久保田先生が「全曲版をやるなんてのは日本で初めてじゃないか」と言ったのだから、たぶんきっとおそらくprobablyそれは日本初演なんだろう。検索してみたところ確かに全楽章を演奏したという日本語の情報は見つからない(やはり抜粋ではあるが日本大学吹奏楽研究会の皆様が1、2楽章を演奏されていた)。なら、言ってしまっていいだろう「私たちが日本初演だ」。一応、もしものことがあってはいけないので、フライヤーに書くのはやめて、いつでも発言を取り消せるようにはしておいたけれど、このコラムを読んで「我こそは真のマヨルカ初演団体なり、物申す!」ということがあればHPお問い合わせまでご連絡願いたい。こちらからの十分な謝罪のあと、マヨ友としてぜひとも交友を深めたい。まあ、(手前味噌であり大変恐縮だが)「マヨルカ全楽章」という、またとない貴重な機会、おそらく今後もそんな馬鹿げた団体は現れないだろうし、そうである以上は、この曲がいかに名曲かということを存分に語る責任は当団にあるだろう。ぜひとも多くの皆様と共有したいところだ。本来ならば演奏を祝し記念品を差し上げたいほどのビッグイベントだが、当団は資金のないアマチュア団体なのでご容赦を。

 

次に、演奏時間80分について。

前述したようにこの曲の全六楽章の演奏がされてこなかったのには相応の理由がありそうだが、まあ、皆さんの思うとおりである。長い。ところが、あまり飽きが来ないという若干のフォローもしておく。あ、待って。今、「長いなら聞きに行くの遠慮しちゃうなぁ」とか思ったそこのあなた、ご安心を。ちゃんと途中で休憩がありますから。ああ、待って、待って。今、「曲の間に休憩を挟むとはインチキだ」とか思ったそこのあなた、まあ、話を聞きなさい。

実は今回のプログラムは下図のとおり

第2部と第3部にまたがって「マヨルカ」を演奏するわけだが、この曲もともとPart1とPart2に分かれている。だから、いいのだ。お客様におかれてはトイレの心配をしていただかなくても大丈夫、当団としてはサッカーのハーフタイムしかり体力の回復を十分にはかり後半戦のパフォーマンスを約束させていただく為の貴重な10分。お客様としても当団としても、これでいいのだ。win-winなのだ。

プログラム公開のついでに曲の構成についても遅ればせながら、紹介しておこう。

この曲は曲名どおり各楽章タイトルがスペイン領・バレアス諸島州・マヨルカ島に実在する山に由来する。Part1:Serra de Tramuntana(トラムンタナ山脈)とPart2: Serra de Artà(アルタ山脈)という東西の二つの山脈に属する山々をそれぞれセットにした。各楽章が10分を超え、単体としても十分に聞き応えのある曲ばかりで、それゆえ楽章抜粋でも演奏されてきたわけだが、やはり全楽章通して聞くことで感じられる一貫したテーマと惚れ惚れするような展開には味わい深いものがある。詳しくは明日からの曲紹介を楽しみにしておいて欲しい。

 

最後に、当団史上、最高難度ということについて。

まあ、これは個人的な感覚なのでそうではない団員もいるかもしれない。しかし、以前より交響曲の抱き合わせ公演(過去のプログラム参照)など一見して無謀とも取れるプログラムに挑戦してきた当団が誇るネジのはずれた団員たちに、今シーズンの練習では異様な不安感が漂っていた。長いだけじゃない。高い、速い、難しい。疲労がすごい。他の3曲を演奏している間の笑顔はどこへ行った。これだけ聞くと難解な現代音楽を想起するかもしれないが、美しい旋律の宝庫であり、わかりやすい構成、圧倒的な厚みをもったサウンド、どれをとっても正真正銘、正統派の交響曲である。だからこそと言うべきだろうか、技巧的な課題もさることながら、技術を超えた歌心が要求される。集中力を欠けば途端に鈍い演奏となるだろう。

しかし間違ってはいけない、難しいからこの曲をとりあげるわけではない。紛れもない名曲という確信があるから選んだのだ。どの楽章も余すことなく味わいたい、そう感じさせるほどの魅力がこの曲には秘められている。練習が進むごとに、ブージョアの魔法の虜になっているのは他でもない私たちであり、この曲無しでは自分の吹奏楽観を今後語ることはできないかもしれない。それほどに衝撃的な出会いを早くお客様にも体験していただきたいとうずうずしている。

いつだって最高難度の挑戦は最高傑作への一歩なのだと、当団は示し続けたい。山々が描く美しく偉大な自然を瑞々しいままに届けることはできるだろうか。またとない、この音楽体験を分かち合うことはできるだろうか。ぜひとも皆様の耳と心で私たちの挑戦を確かめに来ていただきたい。

 - 6th定期演奏会, Program